電気自動車はガソリン車に比べて環境にやさしく、かつ経済的であるとして近年注目されています。
そんな電気自動車に興味があるものの、「バッテリーが発火すると聞いたことがある」「事故が多い印象があって心配」と不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、電気自動車の安全性について詳しく解説します。
環境に配慮しながら安心安全なドライブを楽しみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次 1.電気自動車とは?
2.電気自動車に求められるバッテリーの安全性 3.電気自動車のバッテリーの構造 4.電気自動車の安全性を高めるバッテリーへの取り組み 4-1.安全基準の設定 4-2.安全基準を満たすための試み 5.電気自動車の安全性が高いとされる3つの理由
電気自動車とは?
電気自動車とは、バッテリーに蓄えた電気エネルギーを使ってモーターを動かし、走行する自動車です。
Electric Vehicle(エレクトリック・ビークル)を略して、“EV”ともよばれます。
ガソリン車やハイブリット車、プラグインハイブリット車など、ほかの車種と大きく異なるのは、電気のみを動力源としている点にあります。
電気のみで走行が可能なことから、車体にはエンジンが備えられておらず、走行時にCO2を排出しないため環境にやさしく、サステナブルなところが魅力です。
なお、経済産業省が策定した“2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略”では、2035年までに乗用車新車販売の100%を電気自動車にするという目標を掲げています。
それに伴い日本では、電気自動車のインフラの拡大や導入支援、買い替え促進措置などが進められています。
参照元:経済産業省
電気自動車に求められるバッテリーの安全性
前述した戦略のもと、電気自動車は今後本格的に普及していくわけですが、そのためにはバッテリーの安全性が非常に重要です。
電気自動車に備えられている高電圧バッテリーには、リチウムイオンバッテリーが使用されています。
このリチウムイオンバッテリーは、エネルギー密度が高く優れた電池ですが、可燃性の物質を含んでいるため、発火や爆発の危険性があることは否めません。
特に電気自動車には、バッテリー以外にも多くの高電圧部品が搭載されていることから、大きな衝撃が加わったときに、発火といった二次的な被害をもたらす可能性があります。
ただし、こうした事態にまで発展するのはごく稀です。
実際に電気自動車に使用されているバッテリーは、国連協定規則で定められた厳しい基準を突破したものに限ります。
また、今後の普及に向けてバッテリーの研究は続いているため、さらなる安全性の向上が見込めるでしょう。
電気自動車のバッテリーの構造
上記の内容だけでは、まだ「安全性に不安が残る……」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、以下で電気自動車のバッテリーの構造を確認し、安全性について深掘りしていきましょう。
電気自動車に使用されているバッテリーは、主にセル・モジュール・パック・ケースの4つで構成されています。
まず、電池の最小単位を表しているのがセルです。
セルは、バッテリーの正極と負極が接触するのを防ぐセパレータと、そのあいだに封止された電解液でできています。
この正極と負極には、リチウムイオンを蓄えられるようになっています。
リチウムイオンが電解液を通り、正極と負極のあいだを移動することで、エネルギーを貯めたり使ったりできるという仕組みです。
ただし、セルは単一だとバッテリーとしての容量が少なく、実用的とはいえません。
そこで複数のセルを組み合わせて接続したのが、モジュールです。
さらに、複数のモジュールを接続したものをパックとよびます。
ケースは、モジュール化したバッテリーを外側から覆う構造部品であり、樹脂や金属を使用することで、安全性の確保や衝撃からの保護といった役割を担っています。
電気自動車の安全性を高めるバッテリーへの取り組み
バッテリーの構造を押さえられたところで、続いて、安全性を高めるための取り組みについて理解を深めておきたいところです。
電気自動車のバッテリーは、その製造過程において、さまざまな試験を受けなければなりません。
また、試験をクリアするための、あらゆる安全対策も行われています。
実際にどのような取り組みがなされているのか、以下で解説します。
安全基準の設定
電気自動車のバッテリーは、国連協定規則の“ECE R-100 Part II”で定められた基準を満たさなければなりません。
具体的には、以下の9項目の試験が行われ、発火や爆発、破裂、電解液漏れの兆候がない場合にのみ合格と認定されます。
電気自動車のバッテリーにおける9つの安全基準
輸送振動試験
熱衝撃・サイクル試験
衝撃試験
圧壊試験
外部短絡試験
過充電試験
過放電試験
過昇温試験
耐火性試験
上記のほかにも、国によって独自の基準を設けている場合があります。
その一つが、電気自動車の先進国とされる中国の国家標準であるGB規格です。
GB規格により、バッテリーセルが熱を制御できなくなった場合でも、5分以内に発火・爆発しないように開発することが求められています。
これにより、運転者や同乗者の安全な脱出時間が確保されているのです。
安全基準を満たすための試み
国連協定規則やGB規格をクリアするために、電気自動車のバッテリーにはさまざまな安全対策が施されています。
具体的には、衝撃に強い金属を使ってケースを設計する機械的な手法や、バッテリーの過充電・過放電を防ぐ機能をもたせるといったシステム的な工夫です。
また、セル内部の可燃性の液状電解質の代わりに、発火の可能性が低い固体電解質を使用する試みも、最近の開発では主流となっています。
ほかにも、車体自体に、衝撃がバッテリーに直接伝わらないようにする工夫が施されています。
電気自動車の安全性が高いとされる3つの理由
あらゆる試験や対策を経て市場に送り出されている電気自動車ですが、そのほかにも安全性が高いとされる理由があります。
以下では、その根拠を3つ紹介します。 【関連記事】 電気自動車(EV)とハイブリッド車の違いを徹底解説
理由①ガソリン車よりも火災が少ないため
電気自動車の火災事故は注目を集めやすいですが、実際には、ガソリン車と比較すると火災の発生率は非常に低いとされています。
アメリカの保険見積もり比較サービス『AutoinsuranceEZ.com』の調査によると、販売台数10万台あたりにおける、車の種類ごとの火災発生件数は以下の通りです。
10万台あたりの火災発生件数
車の種類 | 10万台あたりの火災発生数(件) |
ハイブリット車 | 3,474.5 |
ガソリン車 | 1,529.9 |
電気自動車 | 25.1 |
この結果を見ると、SNSやニュースで取り上げられている“電気自動車は燃えやすい”という情報は、一概に正しいとは言えないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。
理由②ガソリン車よりも怪我をしにくいため
電気自動車はガソリン車よりも、運転者および同乗者が負傷するリスクが低いとされています。
IIHS(米国道路安全保険協会)が発表したレポートでは、電気自動車に乗っている人が怪我をする確率はガソリン車よりも40%低いと述べられています。
その主な理由は、バッテリーが床下に配置されていることや、クランプルゾーンが大きく設けられていること、そしてガソリンタンクが爆発するリスクがないことの3つです。
また、同協会が行った最新版の保険分析データでも、事故が発生したときに電気自動車のオーナーから怪我の申告をされる頻度は、非常に少ないという結果が出ているそうです。
参照元:Clean Technica
理由③自動運転・運転支援との相性が良いため
自動運転・運転支援と電気自動車が好相性である点も、安全性が高いとされる理由の一つです。
これらの機能と電気自動車の相性が良い理由は、電気自動車に大型のバッテリーが搭載されていることにあります。
自動運転・運転支援といった機能を装備するには多くの電力が必要なため、電気を動力源とする電気自動車にとっては非常に好都合なのです。
各自動車メーカーが提供している、自動運転・運転支援機能が備わった車は、そのほとんどが電気自動車であることからもご理解いただけるでしょう。
今後、電気自動車の普及とともに自動運転機能が標準化すれば、事故そのものが減少し、ユーザーの安全がより守られるようになるはずです。
安全性の観点からみる電気自動車の将来
ここまでの内容を見ていただいたことで、電気自動車における不安が、安心へと変わってきたのではないでしょうか。
以下では、安全性が高いとされる電気自動車が、今後の普及に向けて、さらに安心できる車として発展していくように行われている取り組みや、可能性についてお伝えします。 【関連記事】 日本と世界の電気自動車普及率は?課題と取り組みを紹介
リチウムイオンバッテリーの改良
近年、電気自動車ではバッテリーの改良が進み、その性能と安全性が大幅に向上しています。
バッテリーは、電気自動車の心臓と言っても過言ではありません。
そんな重要な部分に現在実施されているのは、バッテリーセルの化学組成とバッテリーパックの設計の改良、バッテリー管理システムの高度化の3つです。
バッテリーセルの化学組成の改良では、エネルギー密度の向上にくわえて、耐衝撃性や耐熱性が強化され、バッテリーの長寿命化と発火や爆発のリスクの低減に成功しています。
また、バッテリーパックにおいては、絶縁材や冷却システムの性能を向上させるための改良が進み、温度管理を効率的に行えるようになっています。
さらにバッテリー管理システムの高度化により、バッテリーの状態をリアルタイムで監視できるようになり、異常の早期発見も可能です。
自動運転技術の進展
自動運転技術の進展も、電気自動車の安全性の向上につながっています。
自動運転技術は、運転者の操作ミスによる事故を防ぐ役割を担っています。
具体的には、衝突回避や障害物の検知、車線の維持といった機能です。
人工知能(AI)やセンサー技術の開発が進み、急な障害物や複雑な交通状況にも迅速に対応できるようになり、電気自動車の安全性はさらに高まっています。
次世代エネルギー技術の可能性
電気自動車の性能と安全性を、今後さらに向上させられる可能性を秘めているのが、次世代エネルギー技術です。
なかでも、エネルギー管理システムと新たなバッテリー技術が、近年注目を集めています。
エネルギー管理システムが進化すれば、バッテリーの充電・放電の効率化につながり、これまで以上に寿命が伸び、かつ安全性の向上も図れるでしょう。
また、バッテリーの電解質を液体から固体のものにする研究も進んでおり、より高い安全性とエネルギー密度を兼ね備えられ、発火や爆発のリスクの低減が期待できます。
安全性を重視した電気自動車の選び方
電気自動車を選ぶ際に、特に着目していただきたいのが、メンテナンスの有無と搭載されている安全装備です。
メンテナンスの有無とバッテリーの寿命は、電気自動車の安全性に直結します。
定期的なメンテナンスは、バッテリーの劣化状況を確認し、状態を良好に保つ役割があります。
そのため電気自動車を購入する際は、メンテナンスが定期的に実施され、かつ信頼できる販売店を選択することが大切です。
また、最新の安全装備が備えられているモデルを選ぶのもおすすめです。
先進的な衝突回避システムといった自動運転技術が装備されていれば、より高い安全性を得られます。
これらのポイントを押さえ、安全性を重視した電気自動車を選ぶことで、安心で快適なカーライフを送れるでしょう。
【関連記事】
電気自動車の安全性が高い理由は、国連協定規則で定められた基準をクリアしているため
今回は、電気自動車の安全性の高さや、その理由について解説しました。
電気自動車の発火事故の件数は、ガソリン車よりも低いことがアメリカの調査によりわかっています。
その背景には、電気自動車に使用されているバッテリーが、国連協定規則で定められた厳しい基準をクリアしていることが挙げられます。
また、バッテリーを配置する場所も考慮されており、車の構造そのものが高い安全性を実現している理由の一つです。
BYDが提供する電気自動車では、基準のクリアはもちろん、さらなる安全性と強度を備えた、独自の“ブレードバッテリー”を使用しています。
ガソリン車からの乗り換えをお考えの方は、ぜひBYDの電気自動車をご検討ください。
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