環境問題への対応が急がれる昨今、CO2を含む排気ガスを出さない電気自動車(EV)が世界中で注目されています。
日本でも各自動車メーカーが販売を進めている一方、現在の普及率はどの程度かご存じではない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、日本と世界の電気自動車普及率と、関連する課題や自治体の取り組み状況について解説します。
電気自動車を取り巻く環境を把握したうえで乗り換えを検討したい方は、ぜひご覧ください。
目次
電気自動車が普及し始めた背景
今日、世界各国で電気自動車の普及が進んでいるその背景には、人類が避けては通れない地球温暖化の問題があります。
地球温暖化がこのまま進むと、世界の平均気温が2.6~4.8℃上昇する可能性があり、そうなれば、地球環境に大きな影響を与えることは確実です。
このような状況から、世界各国は地球温暖化対策の一環として自動車からのCO2排出量を規制する方針を定め、電気自動車の普及を促進しはじめたという経緯があります。
参照元:環境省「地球温暖化の現状」
日本の電気自動車普及率
日本では現在、どれほどの電気自動車が普及しているのでしょうか?
以下に、2022年の燃料別乗用車販売台数を表形式で整理しました。
【2022年度燃料別乗用車販売台数】
車種 | 販売台数 | 割合 | 前年度比 |
ガソリン車 | 93万8,750台 | 42.3% | 79.3%(―20.7%) |
HV(ハイブリッド車) | 108万9,077台 | 49.0% | 106%(+6%) |
PHV(プラグインハイブリッド車) | 3万7,772台 | 1.70% | 165%(+65%) |
ディーゼル車 | 12万5,200台 | 5.6% | 87.5%(―12.5%) |
EV(電気自動車) | 3万1,592台 | 1.4% | 149.4%(+49.4%) |
FCV(燃料電池自動車) | 848台 | - | 34.4%(―65.6%) |
その他 | 64台 | - | 39.8%(―60.2%) |
計 | 222万3,303台 | 100% | 92.6%(―7.4%) |
電気を原動力に使う車種にはいくつか種類がありますが、完全にバッテリーの電気のみで走行するのはEVだけです。
EVの2022年度の販売台数は3万1,592台で、新車販売台数に占める比率は1.4%と、ガソリン車やHVと比べるとほとんど普及していないのが現状です。
しかし、前年度比に注目すると、ガソリン車が約20%も減少した一方、EVは50%増と大幅に伸びています。
なお、上記は軽自動車を含んでいない数値です。
2022年は有力な軽EVが発売されており、その販売分も加えたEV全体の販売台数は2021年から約2.7倍増加している計算となります。
参照元:一般社団法人日本自動車販売協会連合会「燃料別販売台数(乗用車)」
世界の電気自動車普及率
一方で、世界の電気自動車普及率はどうなっているのか、以降主要な国ごとに2022年の電気自動車の普及率を整理しました。
参照元:IEA「Global EV Outlook 2023」
アメリカ
アメリカにおける2022年のEVの販売台数は81万466台で、新車販売台数に占める比率は5.8%です。
長年電気自動車界隈を牽引してきたテスラのお膝元ということもあり、日本に比べると普及が進んでいます。
アメリカ政府も、2030年までに新車販売のうち50%以上をEV・PHV・FCVにすると宣言しており、今後も電気自動車の普及は加速していくと考えられます。
参照元:日本貿易振興機構「2022年米新車市場と2023年見通し(後編)EVは前年から大幅に増加」
イギリス
イギリス政府は、2030年にはガソリン車の新車販売を禁止する方針を定めており、公共の充電設備も30万箇所に増やす計画を立てているほど、電気自動車の普及に積極的です。
結果として、イギリスでは2022年、EVとPHVが合わせて約37万台販売され、これは同年の新車自動車販売台数に対して約23%と、高い普及率を誇っています。
フランス
イギリスと同じくヨーロッパ圏のフランスも電気自動車の促進に力を入れており、2022年の自動車販売台数におけるEVとPHVの比率は21%ほどと、高い普及率です。
フランス政府は、2030年までにEVの国内生産台数を200万台に引き上げるという目標を掲げているうえ、補助金制度も増額する方針を示しています。
将来的には、EVの新車販売台数に占める比率が30%に達する見通しです。
ドイツ
ドイツの普及率はさらに高く、2022年の自動車販売台数におけるEVとPHVの比率は、なんと約31%にものぼります。
電気自動車を支えるインフラの整備が非常に進んでいるドイツには、国内の充電設備が既に3万9,441か所もあるのです。
くわえて、2025年末までに新車登録したEVを対象に、10年分の自動車税を免除する措置を講じており、今後もEVの普及を推進する姿勢を見せています。
中国
中国ではEV、PHV、FCVなどをまとめてNEV(New Energy Vehicle)、すなわち新エネルギー車と呼称しています。
今や世界のNEVの約半数を製造している中国は、あのテスラを抑えてNEVの販売台数で世界1位になった、BYDのような自動車メーカーを輩出するほどの存在です。
そんな中国での2022年における、自動車販売台数に対するEVとPHVの比率は約29%と、ヨーロッパ諸国に肩を並べるほどの高さです。
中国政府は現在も、電気自動車と充電設備の拡充に向けた公的支援を推進しており、この先も電気自動車のハイペースな増加が続くと予想されます。
日本の電気自動車普及の課題
世界各国と比較すると、日本は電気自動車の普及が進んでいないと言わざるを得ません。
しかし、なぜここまで普及が遅れてしまったのでしょうか?
そこには、以下に紹介する3つの課題が大きく影響を及ぼしています。
課題①価格が高い
電気自動車が出始めた当初は価格が高いものばかりで、安くとも300万円台からという状況でした。
ガソリン車はモデルにこだわらなければ100万~200万円台、あるいはもっと安く手に入るため、この点は大きな課題と言えます。
ただ、現在は軽EVのようなお求めやすいモデルも販売されているので、車両価格の高さというネックは徐々に解消されはじめています。
課題②車種が限られている
日本国内で電気自動車に乗り換えようと思っても、選択肢がほとんどない状況が続いていたのも普及を遅らせてきた原因の1つです。
先ほど挙げた価格の高さとも相まって、多くの人の手に届きやすいモデルがごくわずかしかありませんでした。
しかし、今ではほとんどの国内メーカーが電気自動車を販売しており、さらに海外メーカーのモデルも続々と日本市場に参入してきています。
そのため、車種の課題については、じきに解決されると考えてよいでしょう。
課題③充電インフラが整っていない
現在日本には、普通充電器が約21,000基、急速充電器が約9,000基設置されており、特に都市部ではいつでも充電できる環境が整っています。
しかし、地方ではまだまだ充電設備のないエリアが多く、日常生活で電気自動車を利用するには心細い状態が続いています。
自宅への充電設備の設置も可能ですが、費用もかかりますし、集合住宅だと住民の同意を得る必要があるため、容易ではありません。
この課題に対して、日本政府は2030年までに公共用の普通充電器を12万基、急速充電器を3万基設置するという目標を掲げているので、将来解決されることを期待しましょう。
参照元:経済産業省「充電インフラ整備促進に関する検討会事務局資料」
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日本の電気自動車普及への取り組み
日本政府は、現在、電気自動車の普及を促進するためにさまざまな取り組みを実施しています。
ここでは、代表的な2つの取り組みをご紹介します。
税制上の優遇
電気自動車は、グリーン化特例によって自動車税が約75%軽減されるうえに、車両購入時に支払う環境性能割については、環境に考慮できているため支払う必要がありません。
さらに、エコカー減税の適用される電気自動車は、新車登録時と初回車検時の自動車重量税が免税されるので、従来のガソリン車と比較して非常にお得です。
補助金制度
国が提供する補助金として、「CEV補助金」があります。
CEV補助金を利用すると、2023年度は電気自動車を購入する際に最大で85万円の交付を受けられます。
上記とは別に地方自治体から交付される補助金もあり、併用すれば電気自動車購入時の出費を大きく抑えられるので、ぜひとも利用したいところです。
ただし、補助金には交付を受ける際の条件や予算上限があるので、必ず事前に利用予定の補助金の詳細を確認しておきましょう。
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電気自動車の市場規模
電気自動車の需要の高まりは、その市場規模にも数値として如実に表れています。
世界の電気自動車市場規模は、2020年時点で2,467億ドル、日本円にして約35兆円の規模です。
環境に対する意識の高まりや、各国でガソリン車規制が進んでいるという背景もあり、今後も市場規模はますます拡大すると考えられています。
それにともない、各メーカーの電気自動車の生産・販売も一段と加速し、私たちの生活に身近な存在となる日もそう遠くないでしょう。
日本でも今後は電気自動車の普及が進んでいく
今回は、日本と世界の電気自動車の普及状況について解説しました。
国をあげて電気自動車の普及に取り組んでいる欧米諸国、そしてお隣中国は、高い電気自動車普及率を誇っているのがおわかりいただけたかと思います。
まだ電気自動車に馴染みが薄い日本でも、政府・自治体による補助金や、各メーカーの尽力によって、今後は間違いなく普及していくでしょう。
先々のことを考えると、今のうちに乗り換え、あるいは新車購入を検討しておくのが賢明な判断かもしれませんね。
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