
電気自動車(EV)に関して、「税金が安い」「補助金も手厚い」という噂を耳にしたことはありませんか?
これは事実ですが、詳細まで知っている、という方はそう多くないかもしれません。
諸外国に立ち遅れた電気自動車の普及率を引き上げるため、日本もようやくEV優遇策に乗り出したわけですが、世間への浸透度は今一つのようです。
そこで本稿では、新車EVに現在施されている、税制優遇と補助金の詳細をまとめました。
ぜひご一読ください。
目次
電気自動車の購入・所有で利用できる税制優遇
電気自動車を購入した際に受けられる税制優遇は、自動車税・軽自動車税に対する「グリーン化特例」、自動車重量税対象の「エコカー減税」および「環境性能割」です。
グリーン化特例の減税制度は2025年度末(2026年3月末)まで、エコカー減税は2026年4月末までが、現在決まっている適用期間です。
旧自動車取得税の「環境性能割」では2026年3月末までEVの非課税が維持されます。
グリーン化特例
自動車税、軽自動車税には、排出ガス性能及び燃費性能に優れた自動車に対し、新規登録した翌年度の税率を軽減するグリーン化特例があります。
適用期間中に電気自動車を購入した場合、税額は75%軽減され、翌年度の税額は2万5,000円から6,500円になります。
ただし、軽減されるのは1年のみで、翌年度は通常の税率適用となるので注意が必要です(東京都の場合は新車登録年度および翌年度から5年度分が免税)。
軽減対象は、電気自動車、燃料電池自動車(FCV)、天然ガス自動車、プラグインハイブリッド車(PHV)の4車種です。
ハイブリッド車を含むガソリン車は2021年4月以降、それまで行われていた自動車税の軽減がなくなり、減税を受けられるのは電気自動車だけとなりました。
グリーン化特例は2023年の3月31日までの限定措置とされていましたが、2026年3月31日まで3年間延長となりました。
エコカー減税
エコカー減税は、排出ガス性能および燃費性能の高さに応じて、自動車重量税が25~100%減税・免税される制度です。
EV、FCV、天然ガス自動車、PHVの4車種は現行の免税制度が2026年4月30日まで、クリーンディーゼル車(ハイブリッド車含む)は2023年末まで維持されます。
これは、購入時の車検(新規検査)、購入後初めての車検(継続検査)の自動車重量税が免税になるという優遇措置です。
エコカー減税は、2023年4月30日で廃止される予定でしたが、世界的な半導体不足で新車の納期が遅れたため、2023年12月31日まで現行制度の延長が決まりました。
制度自体は2026年4月30日まで継続されます。
4車種以外のエコカーである「平成30年排出ガス規制50%低減」適合のガソリン車、LPG車(ハイブリッド車含む)は、2024年1月1日から免税・減税基準が見直される予定です。
さらに、2025年5月1日からもう一段の基準引き上げがあり、免税・減税を受けられる2030年度燃費基準の達成度が厳しくなります。
なお、クリーンディーゼル車も2024年1月1日から同様の扱いとなります。
環境性能割
旧自動車取得税(地方税)を引き継ぐかたちで、2019年に導入されたのが環境性能割です。
自動車を購入したり、譲り受けたりしたときに納付する税金ですが、電気自動車は26年3月末まで免税が決まっています。
免税対象は、グリーン化特例と同じで、EV、FCV、天然ガス自動車、PHVの4車種です。
なお、環境性能割は都道府県税、軽自動車税環境性能割は市町村税です。
電気自動車の購入で利用できる補助金
国が交付する電気自動車への補助金は、2023年10月時点では、次世代自動車振興センターが窓口の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」の1種類です。
電気自動車の購入で利用できる補助金にはこのほか、地方自治体が実施するものもあります。
補助金は国と自治体のそれぞれから受給できます。
また、自治体の補助金は、都道府県と市区町村の補助金をあわせた「二重取り」ができる場合もあるので対象地域か否か調べてみましょう。
CEV補助金
CEV補助金の対象車両はEV、小型・軽EV、PHEV、FCV、超小型モビリティ、電動二輪、ミニカーで、ハイブリッド自動車は対象外です。
それぞれの車の補助金の限度額は、EVが条件付きで85万円(通常65万円)、小型・軽EV、PHEVが55万円、FCVが255万円、超小型モビリティが定額35万円です。
2023年10月時点では、「令和4年度補正予算」と「令和5年度当初予算」という2つのCEV補助金の公募が一緒に執行されています。
2つの補助金の条件は同じですが、予算額は令和4年度補正が700億円、令和5年度当初が200億円で、2023年度は合計900億円の予算が設定されているわけです。
申請期間終了前であっても、申請が予算額に達した時点で、CEV補助金の受付は終了となります。
予算残額(2023年11月13日時点で約186億円)から推定すると、終了時期見込みは2024年1月~2月中旬頃とみられています。
【関連記事】
クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金
EV、PHEV、FCVの導入を進めるうえで、それらの普及に不可欠な充電・水素充てんインフラの整備等を支援する補助金もあります。
「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金(電動二輪実証事業)」という大変長い名称の補助金がそれです。
令和4年度補正・令和5年度当初予算 「予備分」(約30億円)の交付先は、11月20日に本田技研工業株式会社・株式会社Gachaco・OpenStreet株式会社の3社コンソーシアムに決定したばかりです。
令和4年度補正・令和5年度当初予算(この二つで2023年度予算)は合計約300億円で、特に充電インフラについては前年度比3倍強の175億円の予算が措置されています。
政府は、電動車の普及と充電インフラの整備を車の両輪と位置づけ、2030年までに公共用急速充電器3万基を含む15万基の充電器を整備することを目標としています。
2023年度については、高速SA・PAで1基6口タイプ高出力充電器(民間)の導入を推進し、コンビニやディーラーなどの公共スポットでも、90kW超充電器を普及させる方針です。
さらに、電池容量の大きなEVバスやEVトラックの登場に対応し、事業所における高出力充電器や高圧受電設備の整備について補助枠を広げて対応しています。
自動車にかかる税金のあらまし
税金の話に戻りましょう。
電気自動車にかかる自動車関係税を整理すると、現在、何らかの課税が行われているのは、自動車税(および軽自動車税)だけです。
ここからは、電気自動車が目下、免税、減免の扱いを受けている自動車関連税について理解を深めるため、税制全体の枠組みを紹介します。
なお、2019年10月1日以降、自動車税は「自動車税種別割」へ、軽自動車税は「軽自動車税種別割」へ名称変更していますが、ここでは便宜上旧税の名称で解説します。
➀自動車税
自動車税・軽自動車税は、毎年発生します。
4月1日時点での自動車の車検証上の所有者に対して自動的にかかる税金です。
支払う税額の決まり方
税額は、用途や排気量に応じて、以下のように決まっています。
普通車にかかる自動車税のクラス別税額
総排気量 | 新車登録時の税額 |
1L以下 | 2万5,000円 |
1L超1.5L以下 | 3万500円 |
1.5L超2L以下 | 3万6,000円 |
2L超2.5L以下 | 4万3,500円 |
2.5L超3L以下 | 5万円 |
3L超3.5L以下 | 5万7,000円 |
3.5L超4L以下 | 6万5,500円 |
4L超4.5L以下 | 7万5,500円 |
4.5L超6L以下 | 8万7,000円 |
6L超 | 11万円 |
自家用乗車軽自動車 | 一律1万800円 |
なぜ、グリーン化特例で、電気自動車の減税前の税額が最低区分の2万5,000円(75%引き前の税額)なのかといえば、排気量がゼロだからです。
ならば、免税でよさそうなものですが、自動車税は自動車の保有に対して課税されるので、税制の設計上は致し方ないところのようです。
なお自動車税は、年度の途中で購入すると、月割りが適用されますが(購入月の翌月から年度末3月までの月数分合計)、この金額は都道府県により異なります。
②自動車重量税
自動車重量税は、車両の重さによって税額が変わり、道路設備への負担が大きい大型車ほど税額も上がる税金です。
自動車の新規登録(軽自動車の場合は新規検査)や、車検(継続検査)時に、車検証の有効期間分をまとめて納付する仕組みです。
具体的な納付のタイミングは、①新車登録時、②3年後の初回車検、③以降、2年ごとの車検時となります。
前述の通り、電気自動車は「エコカー減税」が適用されるため、新車登録時および初回車検(継続検査)の自動車重量税が免税されます。
支払う税額の決まり方
エコカー減税対象外の自家用乗用車(軽自動車以外)の場合は、車両の重さによって税額が変わり、車両重量0.5トンごとに年間4,100円を納付します。
軽自動車の自家用乗用車の場合は、車両の重さにかかわらず定額で、年間3,300円です。
新車の新規登録から13年以上経過すると税額が上がり、18年以上経過するとさらに税額が上がります。
エコカー減税が適用されない自家用乗用車の2年車検(継続検査)時にかかる自動車重量税
重量 | 税額 |
0.5トン以下 | 8,200円 |
1トン以下 | 1万6,400円 |
1.5トン以下 | 2万4,600円 |
2トン以下 | 3万2,800円 |
2.5トン以下 | 4万1,000円 |
3トン以下 | 4万9,200円 |
※税額は2年分
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電気自動車にかからない環境性能割
環境性能割とは自動車の購入時に支払う税金です。
買った車が中古車でも課税対象です。
普通車(自家用乗用車)の場合、納める税額は取得価額の3%が基本ですが、環境性能が高い車は税率が軽減されます。
さらに、環境負荷が小さい「低燃費かつ低排出ガス認定車」のなかでも、その達成度が高い車ほど非課税または税率が低いなど、環境性能に応じた税率に設計されています。
環境性能割は2023年12月31日までは現行制度を据え置き、以降は基準を見直しながら、2026年3月31日まで維持される見通しです。
支払う税額の決まり方
環境性能割は、「取得金額」×「環境性能割の税率」で税額が計算されています。
現在の税率は、普通自動車の場合、2030年度燃費基準の85%以上達成車が非課税、75%達成車と80%達成車が1%、60%達成車と70%達成車が2%、60%未満達成車が3%です。
電気自動車に今後導入されるかもしれない「走行距離課税」とは
自動車税制の概要とEV減税、免税の最新状況は以上の通りですが、目下、議題に上がっている自動車関連の新税構想があります。
それが、政府が画策中とされる「走行距離課税」です。
文字通り、車の走行距離に応じて課税しようというもので、ガソリン税などの税収が減少している問題に対応するため、浮上してきた新税案です。
近年のガソリン税収の落ち込みは、燃費の良いエコカーの普及やカーシェアリングの増加によるガソリン需要の趨勢的減少にくわえ、自動車の保有台数の減少によります。
2019年からのコロナ禍で外出機会が減ったことも追い打ちをかけたに違いありませんが、もし、走行距離に基づく一律課税となれば国民生活への影響は計り知れません。
綿々と営まれたエコカー開発の努力は無にならないまでも、大きくその意義は損なわれてしまうでしょうし、輸送コスト増から国民生活に多大な影響が及ぶのは確実だからです。
燃料税の減税・廃止が前提ならまだしも、海外では燃料税と走行税のダブル課税という例が多く、日本でも同様の懸念が強いでしょう。
現下の物価高に追い打ちをかける増税はタイミングが悪いとはいえ、構想自体が消滅しない限り、沙汰止みとなってもいずれ浮上してくるおそれがあります。
当面は税制論議の行方を見守るしかありませんね。
【関連記事】 BYDの電気自動車に活用できる補助金・税制優遇を徹底解説
電気自動車の税金は目下6,500円だけ!CEV補助金も実施中
いかがでしたでしょうか。
電気自動車にかかる税金を整理すると、現状で課税されているのは自動車税の「グリーン化特例」による減税後の6,500円(登録1年目のみ)だけです。
エコカー減税により自動車重量税は免税、旧自動車取得税の「環境性能割」も非課税扱いです。
他方、EV購入費用に関しては、現在、国のCEV補助金に加え自治体独自の助成金など、かなり手厚い支援が行われています。
これらの税制優遇・助成制度はEV導入促進のため、現在の実施期限が切れたあとも継続される可能性が考えられますが、確証はないので今がEV購入の好機かもしれません。
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